春秋座・第六番目公演のご案内

 今回上演の運びとなりました「境内」は、これまでの連作「冬の空」とは少し趣を異にしたものになりました。
というのも「冬の空」においては、“手当たり次第の引用文を舞台という時空の全体性へと、包括し得る演戯構造の検証”という設問からの作業であったのに対し、今回の「境内」では、泉鏡花の「湯島の境内」という情緒あふれる恋愛譚をほとんどそのままのかたちで、私等なりに、どこまで文学としての全体性に拮抗し得るかという仮設作業であったからです。
もちろん、これらの視点の据え替えは、舞台の虚構化の高みへの、スイッチバック方式による接近を意図したものに他なりません。
とまれ、結成間もない若輩ではありますれば、意余って力及ばず。原題そのままでは恐れ多く「…境内」と口ごもりましての上演でございます。
宜しくご高覧の上、ご批評下されば幸いと存じます。

座員一同