アトリエ撤退記念公演 「改訂 鏡の部屋」 解説

この度、この稽古場を立ち退くことになりました。
ご覧のように老朽化がひどく、仕方がありません。
それで、折角だから最後に、この稽古場をそのまま舞台装置と見立てて撤退記念公演を行うことにしました。
設定は、廃屋と化した、もと精神病院。ここに、置き去りにされた患者が二人棲みついています。その二人が、夜な夜な繰り広げている遊びの時間。
それが今回の劇の構造です。
どんな遊びかといいますと、源氏物語の一節やチェーホフの名セリフ。あるいは宮沢賢治や石原吉郎の詩を、自分の内面からほとばしり出た言葉のように錯覚する遊びとでもいいましょうか…。遊びの素材となる言葉や、音楽は今回10個ぐらいです。
つまり、平たくいえば寸劇を10場面、次々くっ付けたのが今回の舞台ともいえます。
手芸に、ハギレを繋ぎ合わせて一枚の素敵な模様を作る、パッチワークという手法がありますが、この芝居もそのようなものだと思ってください。場面場面の言葉も状況もバラバラですが、それを役者のリアリティで繋げていく。
上手く繋がった時には、バラバラの素材がそれぞれ有機的に関連し合って、まるで化学反応が起こったかのように、観る者の想像力を刺激する…。
そんな錬金術のようなことを夢見て、この芝居を創りました。
未熟な舞台ですが、皆さんの忌憚のないご感想をお聞かせ頂ければ幸いです。

出典 チェーホフ(ワーニャ叔父さん)、ベケット(ワット)、源氏物語(末摘花)、石原吉郎詩集、宮沢賢治詩集、夏目漱石(夢十夜)、他
演出 濱本達男
出演 大崎美穂  渡辺裕右