身体にきくの「きく」は、「訊く」「聴く」でもあるし「効く」と言う意味でもあります。また「占う」と言う意味をも含んでいます。(この辺の解釈は、野口三千三氏の著書に拠りました。)
だから、「身体にきく」と言うのは、役者が深く内省し、身体に問いかけ、そうして身体からの返答を聴く。その行為を言っているつもりなのです。
そして、そういった作業は、ちょうどアクビが側で見ている人に移るように、或いは梅干しをしゃぶっている人を見ると自分も唾が出て来る時のように、演者の身体の実感が見物人に移って、それは結構「効く」んじゃあないだろうか?と言う大胆不遜な思惑があるわけなのです。
勿論、何を移したいかが問題ですが、今回は「祈り」という、神への問いかけ、すがるような思い…。
そういった人間だけの特質であるところの「祈る」という行為の身体的実感を、石原吉郎や宮澤賢治、ベケットの言葉を語ることで体験しようという試みになりました。
ですからこの舞台(パフォーマンス)は、演劇と言うよりも「音声を発する舞踏」、或いは「祈り」と言う行為の内容からすれば、「神楽,巫女の舞」の現代版と言った方が分かり易いかも知れません。
ともかく、場内に一瞬でも「祈り」が成立し、神が降臨されんことを願うばかりです。
構成・演出 濱本達男
出典 石原吉郎
宮沢賢治
ベケット
出演
巫女 八尾せつ子
後見人 大崎美穂
市川せうぞー
横山仁美
藤井啓永