改訂版 冬の空

 この芝居は、我々がほぼ一年間の稽古中、しゃべり続けたあらゆる言葉を寄せ集めて構成したものです。
 しゃべり続けているうちに、言い間違いがそのまま定着したり、言葉の端々が少しづつズレて、全く違ったニュアンスに変わってしまったりしている。
 この度の再演を機にそれらの言葉の出典を整理してみた。
 公衆便所の落書きから拝借した言葉も二つほどある。「そのこえ、そのいき、そのすがた」(高田馬場F1ビル)と、「みんな喉は渇いているのだ…」(早稲田大、6号館)がそうである。が他にも実に雑多な、殆ど手当たり次第といってもいい程あらゆるところからの引用で、これらの断片が一時間の時間の中で段取りを超えて一つの貌に行き着くことが出来るかどうかは、実際のところ9回裏ツーアウト満塁での逆転ワンチャンスの事態にも似てはなはだ心もとない。
 しかも野球と違ってセーフかアウトの判別も釈然としないとあってはなおさらである。
 逆に言えば、その一向に安定しない演技のおかげで、多少神経が参ったが、今日までそして多分これから先の当分の間、飽きることなく一つのこだわりに関っていけそうではある。